2016.1.1 基準点(境界)に向き合って

二戸久慈支部 下斗米光昭

<土地家屋調査士としての歩み> 

私は昭和56年に開業し、35年になります。

最初に受託した分筆登記は、昭和42年に地籍調査が完了している地区で、いわゆる、座標を持った地図でした。

国土調査係から図根点成果を貰い、スコップでそっと図根点を探す。
やっと見つけた図根点から、トランシットと鋼巻尺でトラバース測量をする。
座標計算、図化、地図との重ね合わせ、筆界点の座標読取、全て手作業で行ったものです。

そこから、筆界点の復元、立会、確定測量をするわけですが、一つの仕事を完成させるのに、かなりの労力を要しました。

もっとも、この頃は平板測量が主流で、トランシット測量をしている人は、あまりいなかったと思います。

しかし、私は全てトランシット測量により筆界測量をし、その座標値を現在も残しています。

 

二戸市は、昭和38年から地籍調査が始まっていましたので、私の開業時には、18年が経過していて、かなりのパーセンテージで地籍調査が進んでいました。

しかし、永久杭(コンクリート杭)の図根点は、地籍図1枚に4点から6点くらいで、後は全て木杭でした。
当然に、木杭は腐りますし、永久杭でも道路に設置したものは道路工事等で、亡失しているという状況でした。

 

開業から2年後の昭和58年、光波測距器(レッドミニ)を購入しました。
このことで、三角点からの測量が可能になりました。

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最初に多角路線を組んだのは、二戸市のバイパス、国道4号線沿いです。

昭和42年の地籍調査で、図根点が殆ど亡失している地区でした。
三等三角点(千四)、四等三角点(石切、上里、本丸、米沢、上米沢)を既知点として、Y型平均網を組み、新点10点の座標値を求めました。

全て、手計算です。
仕事の依頼があると、自前の多角点から、さらにトラバー路線を組み、図根点の点検をし、復元測量をする作業パターンが出きました。

 

平成元年には、トータルステーション、コンピュータ、製図機を購入し、時代の流れに対応しました。

トータルステーションに変わり長い距離が測れるようになり、コンピュータの導入でデータ処理もスピードアップして行きました。

こういった設備の導入により、規模の大きい公嘱業務にも対応できるようになり、業務量が増えるたびに、新しい設備をし、二戸市内の至る所に多角路線を組み、その多角点から筆界測量をしてきました。

この多角点は近くの三角点を使用していますので、現地座標に近く、使い勝手の良いものでした。
現在も、登記基準点から、当時の多角点を見つけると、地図との整合性を見る判断材料にしています。

 

平成9年、私はトリンブルのGPS測量機を4台購入し、新しい測量方法に取り組みました。

GNSS測量

当時は電子基準点がなかったため、三角点を与点とするわけですが、上空視界のある三角点は4~5㎞に1点程度しかありませんでした。

とはいえ、視通が取れない三角点から直接、現地に基準点(新点)を落とせるという、画期的な測量方法に驚愕したものです。
同時に、三角点は、数㎝から15㎝程度の誤差があることが分かりました。
GPS測量は非常に精度の良い測量方法ですが、三角点の誤差が新点の精度に影響することも分かりました。

 

<登記基準点整備事業>

平成13年、日本測地系から世界測地系への測量法の改正がありました。
これを機に岩手の公嘱協会では、電子基準点のみを既知点とする登記基準点整備事業を実施しました。

GPSと電子基準点を組み合わせることで、最強の測量方法が完成したわけです。

 

これは、法14条第1項地図に正面から向き合ってきた人たちの思いから生まれたものです。
そこには、土地の境界をしっかりしたものにし、境界争いを未然に防止し、境界争いのない平和な地域社会への貢献をしようとするものでした。

若い人たちには、登記基準点は、一朝一夕でできたわけではなく、長年の基準点(境界)への取り組みから生まれたことを知って頂きたいと思います。

登記基準点は、平成14年から公嘱協会の管理体制のもと、登録され、共有で使用されてきています。
そして、数えきれないほどの筆界点を特定し、何万件という地積測量図に既知点として記載されてきました。

また、平成20年の岩手宮城内陸地震、平成23年の東北地方太平洋沖地震にも対応し、その都度、改測され地域住民の境界を守っています。

 

<今後の展望>

時代の流れの中で、GNSS測量が主流になって来るでしょう。
しかし、安易に電子基準点からだけの筆界測量は避けるべきだと思います。
将来、境界杭の亡失、境界争いがあっても、誰でも同じ場所に復元することができる登記基準点を設置していくことが大事だと確信しています。

表示の登記は、土地境界の専門家である土地家屋調査士により確認された現地境界杭を、正確に地積測量図に表し、地図、登記簿に反映させるところに意義があります。

そのことで国民は安心して土地を保全することができ、安全に取引ができるわけですから。

そのためには、土地家屋調査士が公嘱業務にも関与し、全ての地積測量図を作成し法務局に提出する。
それを補う不動産調査報告書の中身を充実させる。
法務局は、精度管理された信頼のある登記基準点から測量されていることを確認し、地図に筆界線を入れていく。
当然、地積測量図はXMLで。
そのことで、古い地図も精度の良い地図に変わっていくでしょう。

多くの土地家屋調査士が登記基準点を活用し、法務局と一体となり、高精度の地図を作り上げていくことが大事だと思います。
そんな地積測量図、地図を後世に残して行きたいものです。

 

 

岩手県土地家屋調査士会 会報「黎明」81号27Pに掲載

http://www.iwate-chosashi.jp/pdf/reimei81.pdf

(URLをクリックするとPDFで閲覧できます。)